「週に何回やっていますか?」 「何回できましたか?」
トレーニングの世界では、回数やセット数といった“数字”が基準になりやすい傾向があります。 しかしながら、実際の現場ではこうした声を多く耳にします。
「頑張っているのに身体が変わらない」
「回数はこなしているのに効いている感覚がない」
この原因は、努力不足ではありません。むしろ真面目な人ほど陥りやすい落とし穴があります。 それは、“回数をこなすこと”が目的になってしまっているという点です。
近年のスポーツ科学や運動生理学の研究では、筋肥大や筋力向上において重要なのは単なるボリュームだけではなく、 可動域・負荷時間・安定性・呼吸・神経系の動員といった「質(Quality)」であることが繰り返し示唆されています。
例えば、Journal of Strength and Conditioning Research に掲載された研究では、 フルレンジでのトレーニングが部分可動域よりも高い筋活動を示すことが報告されています。 また、筋肥大に関するメタアナリシスでも、機械的張力や総負荷時間の重要性が指摘されています。
本稿では、回数よりも成果を左右する「質」の5つの要素を、研究的視点と臨床現場の経験の両面から詳しく解説します。
目次
可動域(Range of Motion)― 刺激の“深さ”を決める
まず最も重要なのが、可動域です。
同じスクワット10回でも、浅い動作と深い動作では筋への張力のかかり方がまったく異なります。 筋肉は伸張位(伸びた状態)から収縮位(縮んだ状態)まで大きく動くことで、より多くの筋線維が動員されやすくなります。
実際、フルレンジトレーニングは部分可動域と比較して筋肥大効果が高い可能性が示唆されています。 したがって、「10回できた」ことよりも「どの範囲で動けたか」のほうが本質的なのです。
現場でも、可動域を修正しただけで下半身の筋活動が明らかに変わるケースは珍しくありません。
テンポ(Time Under Tension)― 筋への負荷時間
次に重要なのが、筋が緊張している時間、すなわちTime Under Tensionです。
筋肥大は主に「機械的張力」「代謝ストレス」「筋損傷」の3要素によって引き起こされると考えられています。 ゆっくりとコントロールされた動作は、筋肉にかかる張力時間を延ばし、代謝的刺激を高めます。
一方で、反動を使った素早い動作では、回数は増えても実質的な負荷時間が短くなることがあります。 つまり、20回こなすよりも、コントロールされた8回のほうが効果的な場合もあるのです。
安定性(Stability)― 出力を引き出す土台
身体は不安定な状態では、安全を優先するために神経系が出力を制限します。 これは防御反応であり、怪我を防ぐための仕組みです。
しかし、土台が不安定なままでは、いくら回数を重ねても最大限の刺激は得られません。 特に体幹や股関節の安定性は、上半身・下半身どちらの種目にも影響します。
実際に、体幹の安定を改善しただけでスクワット重量が伸びるケースもあります。 回数を増やす前に、まずは“力が逃げていないか”を確認する必要があります。
呼吸(Breathing)― 見えないパフォーマンス要素
呼吸は軽視されがちですが、極めて重要です。
適切な呼吸は腹圧を高め、脊柱の安定性を向上させます。 腹圧が十分にかからない状態では、フォームが崩れやすく、出力も低下します。
ピラティスやリハビリテーション領域で呼吸が重視されるのは、安定性と神経制御に直結するからです。
呼吸を整えただけで「今まで感じなかった部位に効いた」という反応が出ることは、決して珍しくありません。
神経系の動員(Motor Control)― “効かせる力”
最後に最も本質的なのが神経系の動員です。
筋肉は単に動かすだけでなく、「意識して動かす」ことで活動が高まりやすくなります。 これは運動制御の研究領域でも示唆されています。
正しく感じ、正しく安定し、正しく負荷を乗せる。 このプロセスがあって初めて、筋肉は最大限に動員されます。
回数はその結果であり、目的ではありません。
まとめ ― 数字ではなく、設計を見直す
トレーニングの成果は、単なる回数では決まりません。
- 十分な可動域を確保しているか
- 負荷時間を意識できているか
- 安定性は保たれているか
- 呼吸は適切か
- 神経系は正しく動員されているか
これらが整ったとき、初めて回数が意味を持ちます。
あなたのその10回は、本当に筋肉に届いているでしょうか。
ぜひ一度、“質”の違いを体験してみませんか?
フォームを数センチ修正するだけで、刺激の入り方は劇的に変わります。 呼吸を整えるだけで、体幹の安定感は別物になります。
理論だけではなく、体感することで理解は深まります。
もし今、努力しているのに変化が乏しいと感じているなら、 それは回数の問題ではなく「質」の問題かもしれません。
ぜひ一度、トレーニングの“設計”を見直してみませんか。 本当に効果の出る動き方を、体験で確かめていただけます。